はじめに
バスに乗っていたとき、座席の背もたれに貼られている注意書きが目に入りました。
そこには、日本語・中国語・韓国語の三つの言語で、バスが完全に停車するまで席を立たないようにという内容が書かれていました。
普段から韓国語を勉強している私は、韓国語の文章が気になり、読んでみることにしました。
その中で、特に目に留まったのが 위험하므로 という表現です。
위험하므로 버스가 정류장에 완전히 정차하고 문이 열릴 때까지 자리에서 일어나거나 이동하지 마십시오.
(危ないですのでバスが停留所で完全に停車しドアが開くまで席を立ったり移動しないでください)
위험하다 が「危険だ」という意味なのは分かりましたが、後ろに付いている –므로 が気になりました。
韓国語で理由を表す「~なので」「~だから」といえば、私は –아/어서 を思い浮かべます。
それなのに、なぜこの注意書きでは 위험해서 ではなく、위험하므로 が使われているのでしょうか。
調べてみると、–(으)므로 は理由や原因を表す文法で、案内文や注意書きなど、改まった文章で使われることが多い表現だと分かりました。
今回は、バスの注意書きで見つけた 위험하므로 をきっかけに、–(으)므로の意味や使い方、–아/어서との違いを整理してみたいと思います。
위험하므로はどういう意味?
위험하다と–(으)므로に分けて考える
バスの注意書きで見つけた 위험하므로 は、日本語では「危険なので」「危ないですので」という意味です。
最初は一つの単語のように見えましたが、調べてみると、次の二つに分けて考えられることが分かりました。
-
위험하다:危険だ
-
–(으)므로:~なので、~であるため
위험하다は「危険だ」という意味の形容詞です。
そこに理由や原因を表す –(으)므로 が付くことで、위험하므로 という形になります。
위험하다の語幹は 위험하- です。
この語幹は母音で終わっているため、–므로 を付けます。
위험하다 → 위험하므로
(危険だ → 危険なので)
バスの注意書きを日本語と比べてみる
バスの注意書きでは、韓国語の 위험하므로 が、日本語の「危ないですので」に当たります。
続く文章では、バスが停留所で完全に停車し、ドアが開くまで、席を立ったり移動したりしないように呼びかけています。
つまり、危険であることを理由に、安全のために守ってほしい行動を伝えているのです。
同じ「~なので」という意味でも、韓国語ではどのような場面で使うかによって表現が変わります。
では、–(으)므로の使い方をもう少し詳しく見ていきましょう。
–(으)므로の意味と使い方
理由や原因を表す「~なので」
–(으)므로 は、理由や原因を表す韓国語の文法です。
日本語では「~なので」「~であるため」「~だから」などと訳されます。
前の文章で理由を示し、その理由を受けて、後ろの文章で結果や判断、注意などを伝えるときに使われます。
例えば、次のような文章です。
길이 미끄러우므로 조심하십시오.
(道が滑りやすいので、注意してください)
ここでは、道が滑りやすいことを理由に、注意を呼びかけています。
また、次のような表現もあります。
오늘은 휴무일이므로 문을 닫습니다.
(本日は休業日のため、店を閉めています)
この文章では、休業日であることを理由に、店を閉めていることを説明しています。
–므로と–으므로の付け方
–(으)므로は、動詞や形容詞の語幹に付けて使います。
ただし、語幹の最後にパッチムがあるかどうかによって、形が変わります。
語幹が母音で終わる場合は、–므로を付けます。
例えば、
가다 → 가므로
(行くので)
크다 → 크므로
(大きいので)
위험하다 → 위험하므로
(危険なので)
一方、語幹がㄹ以外のパッチムで終わる場合は、–으므로を付けます。
먹다 → 먹으므로
(食べるので)
작다 → 작으므로
(小さいので)
많다 → 많으므로
(多いので)
また、ㄹパッチムで終わる語幹の場合は、ㄹが脱落して–므로が付きます。
살다 → 사므로
(住むので)
길다 → 기므로
(長いので)
このように、–(으)므로は、語幹の形によって付け方が変わります。
最初は少し複雑に感じますが、今回の 위험하므로 は、語幹に–므로を付ける基本的な形です。
案内文や注意書きで使われる理由
–(으)므로には、理由を改まった形で説明する働きがあります。
そのため、日常の会話よりも、公共施設の案内、注意書き、お知らせなどで使われることが多い表現です。
例えば、
공사 중이므로 출입하지 마십시오.
(工事中のため、立ち入らないでください)
비가 많이 오므로 운전에 주의하십시오.
(雨がたくさん降るので、運転に注意してください)
どちらも、理由を伝えたうえで、相手に注意を呼びかけています。
今回のバスの注意書きも、これらと同じ使い方です。
–(으)므로と–아/어서はどう違う?
위험하므로と위험해서を比較
韓国語で理由を表す文法には、–(으)므로のほかに –아/어서 があります。
どちらも日本語では「~なので」「~だから」と訳せるため、最初は同じように使えるのではないかと思いました。
例えば、위험하다(危険だ)を使うと、次の二つの形になります。
위험하므로
(危険なので)
위험해서
(危険なので)
日本語にすると、どちらも同じ意味です。
しかし、韓国語では、使われる場面や文章の雰囲気に違いがあります。
위험하므로 は、理由を改まった形で伝える表現です。
一方、위험해서 は、日常会話でも自然に使える表現です。
例えば、次の文章を比べてみます。
위험하므로 가까이 가지 마십시오.
(危険ですので、近づかないでください)
위험해서 가까이 가지 않았어요.
(危なかったので、近づきませんでした)
一つ目は、危険であることを理由に、相手に近づかないよう注意を呼びかけています。
二つ目は、危険であることを理由に、近づかなかったという過去の行動を説明しています。
どちらも理由を表していますが、–(으)므로は改まった文章で使われやすく、–아/어서は日常会話で幅広く使われます。
ただし、二つの文は文末の形も違うため、文章全体の印象も異なります。
日常会話と改まった文章での使い分け
では、同じ内容を伝える場合はどうでしょうか。
例えば、道が滑りやすいことを伝える場合です。
길이 미끄러우므로 조심하십시오.
(道が滑りやすいので、注意してください)
길이 미끄러워서 조심해야 해요.
(道が滑りやすいので、気をつけなければなりません)
一つ目は、理由を示して相手に注意を呼びかける、改まった表現です。
二つ目は、理由を説明し、注意する必要があることを伝えています。
ここで注意したいのは、–아/어서は、通常、後ろに命令や勧誘の表現を直接続けられないという点です。
そのため、日常会話で「道が滑りやすいから気をつけてください」と呼びかけるなら、
길이 미끄러우니까 조심하세요.
(道が滑りやすいから気をつけてください)
という表現が自然です。
ここで使われている –(으)니까 も理由を表す文法ですが、今回は–(으)므로との違いを理解することが目的なので、詳しい説明は省きます。
今回整理してみて、韓国語では、同じ「~なので」という意味でも、いつ、どのような場面で使うかによって表現を選ぶことが大切なのだと感じました。
バスの注意書きにあった 위험하므로 は、単に「危険なので」という意味を伝えるだけでなく、公共の場で使われる改まった文章にも合う表現だったのです。
バスの注意書きに出てきたほかの韓国語
정차하고と열릴 때까지
バスの注意書きには、위험하므로以外にも、気になる韓国語が使われていました。
まずは、次の部分です。
버스가 정류장에 완전히 정차하고 문이 열릴 때까지
(バスが停留所で完全に停車し、ドアが開くまで)
ここで使われている単語を整理してみます。
정류장 は「停留所」、완전히 は「完全に」という意味です。
また、정차하다 は「停車する」という意味の動詞です。
정차하고 は、정차하다に –고 が付いた形で、「停車して」「停車し」と訳せます。
次に気になったのが、문이 열릴 때까지 という部分です。
문 は「ドア」、열리다 は「開く」という意味です。
ここでは、열리다に –(으)ㄹ 때까지 が付いています。
열리다 → 열릴 때까지
(開く → 開くまで)
つまり、문이 열릴 때까지 で「ドアが開くまで」という意味になります。
ちなみに、열다と열리다には次のような違いがあります。
문을 열다
(ドアを開ける)
문이 열리다
(ドアが開く)
この注意書きでは、誰かがドアを開ける動作ではなく、ドアが開くことを表しているため、열리다が使われています。
일어나거나と이동하지 마십시오
もう一つ、私が気になったのが、次の部分です。
자리에서 일어나거나 이동하지 마십시오.
(席を立ったり、移動したりしないでください)
最初にこの文章を書き写したとき、私は 일어나거나 の「거나」の部分を正しく読み取れていませんでした。
ところが、もう一度バスの注意書きを確認すると、–거나 という形になっていることに気づきました。
そこで、일어나거나 という形には、どのような意味があるのだろうと思いました。
調べてみると、–거나 は「~したり」「~するか」「~または」などを表す文法だと分かりました。
일어나다 → 일어나거나
(立ち上がる → 立ち上がったり)
例えば、日常会話では次のように使えます。
주말에는 책을 읽거나 음악을 들어요.
(週末は本を読んだり、音楽を聴いたりします)
このように、–거나は二つの行動を並べたり、選択肢を示したりするときに使われます。
バスの注意書きでは、席を立つことと移動することを並べています。
そして、文章の最後にある 이동하지 마십시오 は、「移動しないでください」という意味です。
이동하다 は「移動する」、–지 마십시오 は「~しないでください」という禁止の表現です。
日常会話でよく使われる –지 마세요 よりも改まった言い方で、注意書きや案内文に合っています。
つまり、この文章全体で、席を立つことも移動することもしないように伝えているのです。
今回の注意書きでは、最初に気になった위험하므로だけでなく、文字を確認し直したことがきっかけで、–거나 という文法にも出会いました。
短い注意書きですが、一つずつ読んでみると、これまで知らなかった表現や、改めて確認したい文法が含まれていることに気づきました。
実際の注意書きから学んだこと
今回、バスの注意書きを読んでみて、普段の韓国語学習では気づかなかった表現に出会いました。
特に印象に残ったのは、同じ「~なので」という意味でも、日常会話と注意書きでは使われる表現が異なることです。
また、最初は正しく読み取れなかった 일어나거나 を確認し直したことで、–거나 という文法にも気づきました。
もし確認し直していなかったら、そのまま読み過ごしていたかもしれません。
これまでは教材や日記を中心に韓国語を勉強してきましたが、身近な場所にある韓国語も、学習のきっかけになるのだと感じました。
まとめ
今回は、バスの注意書きで見つけた 위험하므로 をきっかけに、韓国語の –(으)므로 の意味や使い方を整理しました。
–(으)므로 は「~なので」「~であるため」という理由や原因を表す文法で、注意書きや案内文などの改まった文章で使われることが多い表現です。
日常会話で使われる –아/어서 と意味は似ていますが、文章の雰囲気や後ろに続く表現には違いがあります。
今回の注意書きを通して、普段使っている言葉と公共の場で使われる韓国語の違いを知ることができました。
これからも、実際に目にした韓国語で気になる表現があれば、意味や使い方を一つずつ確かめていきたいと思います。
