はじめに|「虫が苦手」でも、いけばなは楽しめる
いけばなを続けていると、「虫がついて困った」「虫が苦手で植物を育てるのに抵抗がある」という声を聞くことがあります。私自身も、特に夏場はアブラムシやハダニの発生に悩まされたことがあり、なるべく虫の被害を避けられる植物を選ぶようになりました。
この記事では、虫がつきにくい植物に注目し、いけばなでの活用法や育て方のポイントをご紹介します。快適に、そして安心していけばなを楽しむためのヒントになれば幸いです。
虫がつきにくい植物の特徴とは?
1. 香りや成分に虫よけ効果がある
植物のなかには、精油や苦味成分を持ち、虫が寄りつきにくいものがあります。ラベンダーやローズマリーなどのハーブ類は代表例です。
2. 葉や茎が硬くて虫が好まない
ユーカリやリュウカデンドロンなど、しっかりとした質感の植物は、虫の食害を受けにくい傾向があります。
3. 水やりの頻度が少ない
乾燥気味に育てる植物は、ジメジメした環境を好む虫が発生しにくいため、結果的に虫がつきにくくなります。
虫がつきにくい植物7選|特徴と活け方のコツ
植物名 | 特徴 | 活け方のコツ |
---|---|---|
ラベンダー | 香りが虫除けに◎ | 少量でも香りと線が生きる |
ユーカリ | 精油成分で虫を避ける | 葉の形が個性的で映える |
ローズマリー | ハーブ系で強健 | 枝ものとしてもアクセントに |
カラミンサ | ミントの香り+可憐な花 | さりげない花添えに便利 |
アイビー(ヘデラ) | 繁殖力強く虫に強い | 垂れ感を活かすと◎ |
コリウス | 虫に強くカラーリーフも豊富 | 葉の色で変化を出せる |
シダ類(トキワシノブなど) | 通気性のある葉で虫がつきにくい | 足元や背景に柔らかさを演出 |
実際にやってみた!虫トラブルを減らす育て方の工夫
私が植物を育てていて、虫に悩まされた経験は一度や二度ではありません。でも、いくつかの習慣を取り入れることで、ぐんとトラブルが減りました。
● 水やりは朝に。夕方以降は控える
夜間の湿気は虫の好む環境。風通しの良い午前中に水やりするだけでも効果的です。
● 葉の裏側をたまにチェック
ハダニやアブラムシは、葉の裏に隠れていることが多いので、週に1度の確認がおすすめです。
● 切り花にする前に「洗う」
花材として使う前に、軽く水で洗う/ふくことで、虫や卵を物理的に落とせます。小さなひと手間で安心感が増します。
いけばなでの活用ポイント|虫の少ない植物だからできる表現
虫がつきにくい植物は、長く飾っても傷みにくく、管理も楽なのが嬉しいところです。
▷ 香りを作品の要素にする
ローズマリーやラベンダーは、視覚だけでなく香りで空間を満たしてくれるので、作品に“見えない印象”を与えられます。
▷ 葉の色や形を生かす
コリウスの赤や紫の葉は、花がなくても華やか。葉の美しさだけで空間を構成する作品もおすすめです。
▷ 小さな空間にも映える植物を選ぶ
アイビーやハーブ類は、小鉢でも育てやすく、ベランダや室内で管理しやすいのも魅力。狭いスペースでもいけばなを楽しめます。
虫がつきにくい環境を整える|育てる場所・空間づくりの工夫
いくら虫がつきにくい植物を選んでも、育てる環境によっては虫が発生してしまうこともあります。植物にとって心地よい空間は、人にとっても快適な空間。ここでは、私自身が試してきた「虫を寄せにくい育て方・環境づくり」の工夫をご紹介します。
● 通気性は“風通し”だけじゃない
「風通しがよい場所で育てましょう」とよく言われますが、具体的には空気の流れを感じるかどうかがポイントです。私の場合、風の入りにくいベランダに植物を置くときは、小さなサーキュレーターを設置しています。風が滞ると湿気がたまり、カビやコバエの原因にもなるため、空気の動き=虫の予防と考えるようになりました。
● 鉢皿の水はためすぎない
以前、鉢皿にたまった水を放置していたところ、数日でコバエが発生してしまったことがあります。それ以来、水やりのたびに鉢皿の水を捨てる習慣をつけました。鉢植えは「しっかり水やり+乾かす時間」が大切。土が常に湿っている状態では、根腐れだけでなく虫の温床にもなってしまいます。
● コンパニオンプランツを活用する
香りの強いハーブを近くに置くと、ほかの植物への虫の飛来が少なくなる気がします。私のおすすめは、バジル・ミント・チャイブなど。いけばなに使わない日も、そのまま飾って香りを楽しめるのも魅力です。
● 土を見直すことも効果的
ふかふかの土は植物にやさしい反面、虫も住みやすい環境になります。私の場合は、室内用の観葉植物には「無機質な用土(赤玉土・鹿沼土など)」をメインに使うことで、虫の発生が激減しました。特に、粒の粗い土はコバエが卵を産みにくいため、土選びも大切なポイントです。
私の“虫に強い花材”エピソード集|5つの実体験から学んだこと
植物を育てていけばなに使っていると、「あっ、これは虫がつきにくいな」「逆に、これは毎年虫が出る……」という違いを肌で感じるようになります。ここでは、私が実際に使って「虫のトラブルが少なかった!」と感じた花材を、エピソード形式でご紹介します。
● ラベンダーは香りと防虫のダブル効果
ある夏、鉢植えのラベンダーを剪定したあと、穂先をいけばなに活用してみました。すると、部屋に漂う香りが心地よいだけでなく、周囲に虫がまったく寄ってこないことに気づいたのです。以来、ラベンダーは「虫よけも兼ねた一枝」として定番になりました。
● ユーカリは茎も葉もタフで安心感あり
ユーカリを花材として使ったとき、そのパリッとした葉と香りの清涼感に感動しました。何より良かったのは、数週間飾っても虫がつかなかったこと。精油成分が含まれているためか、他の花材よりも明らかに虫が寄ってきにくいと感じています。花瓶に挿すと長持ちするのも嬉しいポイントです。
● ローズマリーは“活けたあと”も香りが続く
料理用に育てていたローズマリーをいけばなに使ったところ、活けて数日たっても、空気中にふんわり香りが残るのを感じました。香りの強い植物は虫を寄せつけないという実感もあり、それ以来、ローズマリーは「夏の定番素材」になっています。
● ミントは控えめだけど頼れる存在
ミントは見た目こそ派手ではありませんが、活けた瞬間に空気がリフレッシュされるような清涼感があり、虫も避けてくれる印象です。私は花材として使う際、葉を1〜2枚軽くつぶして香りを引き出してから活けるようにしています。これだけで空間が変わるような気がします。
● シダ類は見た目以上に虫がつきにくい
トキワシノブやアスプレニウムなどのシダ類は、見た目がやわらかく、湿気に強いイメージがある一方で、意外と虫がつきにくいと感じています。私は夏に涼感を出したいとき、背景や足元に使うことが多く、手入れも簡単なので重宝しています。
このように、自分の経験から「虫がつきにくい」と感じた植物は、結果的に長く楽しめて、手間も少ないものばかりです。日々のいけばなの中でも、こうした“虫に強い花材”を取り入れることで、ストレスの少ない作品づくりが可能になります。
いけばな初心者でも安心!虫が少ない植物で始める入門セット
「いけばなに興味はあるけど、虫が苦手……」「育てるのはちょっと不安」という方におすすめなのが、**虫がつきにくく、育てやすい植物を使った“入門セット”**です。
私自身も、いけばなを始めたころは、どんな植物を育てればいいのかわからず、虫がつくたびに落ち込んでいました。でも、少しずつ「これなら安心」という組み合わせを見つけたことで、気軽に楽しめるようになったのです。
以下に、育てやすくて虫に強い植物を組み合わせた、初心者向けのいけばなセットをご紹介します。
🌿 清涼感セット|香りと線の美しさを活かして
ラベンダー+ミント+カラミンサ
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ラベンダー:主枝として立体感を出す
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ミント:副枝や足元のあしらいに
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カラミンサ:小花で軽やかさを演出
この組み合わせは、すべてハーブ系で香りがあり、虫が寄りにくいのが特徴。香りのある植物を使うことで、作品に“見えない余韻”も加わります。
🌱 グリーンリズムセット|葉姿だけで構成するアレンジ
ユーカリ+コリウス+アイビー
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ユーカリ:線と動きで全体をまとめる
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コリウス:赤や紫などの葉色でアクセント
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アイビー:垂れ下がりを活かして動きを出す
このセットは、花がなくても華やかさが出せるのが魅力。虫がつきにくく、室内でも育てやすい植物ばかりなので、「花が手に入らない日」でも十分にいけばなを楽しめます。
🌸 プチ和風セット|落ち着いた雰囲気を楽しむ
シダ類+ローズマリー+ミント
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シダ:背景や土台に
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ローズマリー:線を作る中心素材
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ミント:香りと添え葉の役割
このセットは、“静かな強さ”を持つ葉もの中心の構成。和の空間や、落ち着いた場所に活けるのにぴったりです。
これらの組み合わせは、どれも育てやすく、管理も比較的楽なものばかり。虫の心配を減らすことで、いけばなそのものに集中できる環境が整います。
最初は少しずつ、身近な植物から。そこから自分のスタイルが広がっていくのも、いけばなの楽しさのひとつです。
虫の少ない季節を味方に|時期を選んで快適ないけばなを
植物に虫がつきやすいのは、たいてい高温多湿の季節です。つまり、虫の少ない季節にいけばなを始める・新しい花材を試すのが、快適さにつながります。
ここでは、虫が出にくい時期や、それぞれの季節の特徴をご紹介します。
🌸 春(3〜5月)|新芽と香りの季節
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気温・湿度が安定し、虫が少なめ
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多くの植物が元気に成長し、活けやすい素材が豊富
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ラベンダーやローズマリーの香りも際立つ
☀ 夏(6〜8月)|管理と選定に工夫が必要
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虫の活動が最も活発な時期
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風通しと乾燥を意識して、ハーブやシダ類を活用するのがおすすめ
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冷房で乾燥しがちな室内でも強い植物を選ぶ
🍁 秋(9〜11月)|虫が落ち着く、色づきの季節
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夏の虫のピークが終わり、涼しさが戻る
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葉ものが美しく紅葉し、深みのある作品が作れる
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ユーカリやコリウスなども活躍
❄ 冬(12〜2月)|控えめながら清らかな季節
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虫はほぼ出ないが、育てられる植物は限られる
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常緑植物やドライ素材も活躍。香りのある枝ものが映える
虫が苦手な方や、快適にいけばなを続けたい方は、春や秋から始めてみるのがおすすめです。虫の心配が少ない時期にスタートすると、「育てる・活ける」こと自体がぐっと楽になります。
よくある質問Q&A|虫がつきにくい=完全に虫が来ない?
Q. 虫がつきにくい植物なら、絶対に虫は出ませんか?
A. 残念ながら「虫が100%つかない植物」はありません。ただし、被害が出にくい、管理しやすいという意味で「つきにくい」植物を選ぶのは非常に有効です。
Q. 虫除けスプレーは使ってもいい?
A. 観賞用であれば使用OKですが、使用後はしっかり乾かしてから室内に取り込むようにしましょう。天然由来のスプレーを使うと安心です。
Q. 植物の“虫耐性”はどう調べればいいの?
A. 苗を購入するときに、園芸店のスタッフやタグ表示を確認してみましょう。「病害虫に強い」と書かれているものを選ぶと安心です。
コラム|虫と共にある自然も、いけばなの一部?
いけばなを楽しむうえで、どうしても避けたい存在――それが「虫」だという方は多いかもしれません。私自身も、以前は「虫が出たらイヤだな」と思って、室内に植物を持ち込むのをためらったこともあります。
でもあるとき、庭で切ったナンテンの枝に小さなクモが一匹ついていたのを見て、ふと考えました。「このクモも、この枝に暮らしていたんだな」と。
自然の中では、花も枝も葉も、虫たちと共に生きています。虫が運ぶ花粉で咲く花もあり、虫が葉をかじることで植物が強くなることもあります。もちろん、室内で過ごす私たちには「快適な距離感」が必要ですが、それでも、虫がいるからこそ自然が成り立っているという視点は、いけばなにも通じるものがあるように感じます。
虫を排除するだけでなく、「共にある自然」として、ほんの少しだけ許容する心の余白も、いけばなの美しさを深めてくれるかもしれません。
まとめ|ストレスなく、いけばなと暮らそう
虫が苦手な方にとって、「植物=手間がかかるもの」という印象があるかもしれません。でも、選び方とちょっとした工夫次第で、快適にいけばなを楽しむことができます。
私も虫対策に悩んでいた時期がありますが、香りのあるハーブや丈夫な葉ものを選ぶようになってからは、トラブルが激減し、いけばなをもっと自由に楽しめるようになりました。
これからも、暮らしに寄り添う植物たちとの関係を大切にしながら、心地よい“いけばな生活”を続けていきたいと思います。