いけばなに使える「グラウンドカバー」植物を育てよう|足元に季節の彩りを

育てて楽しむ いけばな植物

はじめに|いけばなにおける「足元」の演出

いけばなを習いはじめてしばらく経ったころ、「作品の足元」にもう少し自然な広がりがほしい……と感じるようになりました。
そのとき出会ったのが、グラウンドカバー植物です。

本来は庭の土を覆うための植物ですが、低く這うような葉姿や繊細な花が、作品に柔らかなリズムや広がりを与えてくれます。
この記事では、いけばなに活用できるグラウンドカバー植物の育て方・使い方・おすすめ品種を、初心者にもわかりやすく紹介します。


    1. はじめに|いけばなにおける「足元」の演出
  1. グラウンドカバー植物とは?
    1. 地面を覆い、景観と環境を整える植物
    2. いけばなとの相性
  2. 育てやすくて使いやすい!おすすめグラウンドカバー植物7選
    1. おすすめ品種一覧表
  3. 育て方の基本|庭でも鉢でも楽しめる!
    1. 1. 用土と鉢選び
    2. 2. 水やりと管理
    3. 3. 剪定と株分け
  4. 活け方のヒント|草丈とのバランスを取る
    1.  基本は「主花材の足元」に自然に添える
    2. こんな使い方もおすすめ
  5. 季節別おすすめグラウンドカバー植物|季節の情景を足元から
    1. 🌸 春|やわらかな芽吹きと可憐な花を
    2. ☀ 夏|緑の広がりと爽やかさ
    3. 🍁 秋|深みのある色と落ち着き
    4. ❄ 冬|常緑の存在感と静けさ
  6. いけばな作品実例紹介|足元が変われば印象も変わる
    1.  実例①:山路の風景を表現した「枝もの+ワイヤープランツ」
    2.  実例②:ハーブと野の花のさりげない共演
    3.  実例③:秋の静けさを感じるセダム使い
  7. 庭や暮らしの中での応用|「育てる」ことが暮らしを豊かにする
    1.  植物のある日常で、こんな楽しみ方も
    2.  シェアできる喜びも
  8. 和の庭と下草文化とのつながり|いけばなに“庭の目線”を取り入れる
    1.  和の庭園に見る下草の役割
    2.  いけばなに応用するメリット
  9. シェア&循環のすすめ|植物とともにめぐる楽しみ
    1.  育てて、活けて、増やして、また使う
    2.  育てた植物を“おすそわけ”してみよう
    3.  小さな循環が、いけばなをもっと楽しくする
  10. 体験談|庭のグラウンドカバーを活けてみたら
  11. よくある質問Q&A|いけばな初心者にも安心!
  12. まとめ|いけばなに「足元の彩り」を
  13.  エッセイ風あとがき|足元に目を向けると、見えてくるもの

グラウンドカバー植物とは?

地面を覆い、景観と環境を整える植物

「グラウンドカバー」とは、地表を覆うように広がる性質を持つ草花のこと。
もともとは雑草防止や土壌保護景観の補強などに用いられますが、そのコンパクトさ・広がり方・花や葉の個性から、いけばなにおいても非常に魅力的な存在になります。

いけばなとの相性

  • 低い位置で彩りを添える

  • 枝ものや主花の「足元」を自然に演出

  • 花器の縁や水際にそっと添えることで**「野の風景」感**を表現


育てやすくて使いやすい!おすすめグラウンドカバー植物7選

以下に、いけばなに活かしやすく、家庭で育てやすいグラウンドカバー植物を表で紹介します。

おすすめ品種一覧表

▼ 以下の表で、育てやすさや活け方のポイントをチェック!

植物名 特徴 開花期 活け方のポイント 難易度
ワイヤープランツ 丸い葉が可愛く、這うように伸びる ―(花は目立たない) 枝物の足元にふわっと広げて ◎初心者向け
タイム(クリーピング系) 香り良く、初夏に花も咲く 5〜6月 ナチュラルな草ものと相性良し
リシマキア・ヌンムラリア 黄緑の葉が明るくアクセントに 5〜7月 作品の明度調整に便利
セダム(万年草系) 多肉質で乾燥に強い 種類により通年 水際にも強く、短期活けに向く
ベロニカ・オックスフォードブルー 青花とつややかな葉が魅力 4〜5月 春の作品に彩りを添える
アジュガ 濃い葉色と初夏の花穂が特徴 4〜6月 落ち着いた雰囲気に合う
ヒメツルソバ 丸いピンクの花がユニーク 春〜秋 作品に遊び心を加えたいときに △繁殖力注意

育て方の基本|庭でも鉢でも楽しめる!

1. 用土と鉢選び

  • 水はけの良い土を選ぶ(市販の草花用培養土でOK)

  • 地植えの場合、直射日光〜半日陰の場所を選ぶ

  • 鉢植えでは広がりを意識して浅鉢や横長プランターもおすすめ

2. 水やりと管理

  • 基本は乾いたらたっぷり

  • 蒸れやすい夏は風通しに注意

  • 多肉系(セダムなど)は乾燥気味でもOK

3. 剪定と株分け

  • 伸びすぎたらカットして形を整える

  • 春・秋に株分けすればどんどん増える

  • 剪定した枝はそのままいけばなに活用できるのが魅力!


活け方のヒント|草丈とのバランスを取る

 基本は「主花材の足元」に自然に添える

  • 枝ものや大きめの花材と組み合わせて、草丈差による立体感を演出

  • 花器の縁や、正面から見て視線の抜ける位置に配置すると自然

こんな使い方もおすすめ

  • 【小品花】の足元にあしらって「野辺の一輪風」に

  • 水盤の縁から垂れさせて「野趣」を表現

  • 花材が少ないときの空間補填質感の足し算にも便利

季節別おすすめグラウンドカバー植物|季節の情景を足元から

いけばなは、季節を表現する芸術。
グラウンドカバー植物を取り入れることで、**「足元から季節感を演出する」**ことができます。ここでは、春夏秋冬それぞれにおすすめの植物を、開花や葉色の変化とともにご紹介します。

🌸 春|やわらかな芽吹きと可憐な花を

植物名 特徴 活け方のヒント
ベロニカ・オックスフォードブルー 小さな青花が春風のように揺れる 主役の花材の足元に、軽やかに添えて
ヒメツルソバ ピンクの小花がぽこぽこと咲く モダンな器にあしらえばアクセントにも

☀ 夏|緑の広がりと爽やかさ

植物名 特徴 活け方のヒント
タイム(クリーピング) 香り高く、茎が自然に垂れる ハーブとして香りも楽しめる作品に
リシマキア・ヌンムラリア 明るい黄緑が涼しげ 黒系の器と合わせて夏らしく演出

🍁 秋|深みのある色と落ち着き

植物名 特徴 活け方のヒント
アジュガ ブロンズ系の葉が秋に映える 枝ものと合わせて、地面の色を意識した演出に
セダム(紅葉するタイプ) 赤やオレンジに色づく 短く切って、小品作品に添えると効果的

❄ 冬|常緑の存在感と静けさ

植物名 特徴 活け方のヒント
ワイヤープランツ 冬も葉を落とさず青々としている 葉の丸みで、冷たさの中にやさしさを演出
ヘデラ(アイビー) つる性で動きが出しやすい 器の縁に垂らすことで空間に広がりが出る

いけばな作品実例紹介|足元が変われば印象も変わる

ここでは、実際にグラウンドカバー植物を使って活けた私の作品やアイデアをご紹介します。足元に少しの緑を加えるだけで、作品全体の印象がガラリと変わるのを体感できました。

 実例①:山路の風景を表現した「枝もの+ワイヤープランツ」

花材:コデマリの枝、ワイヤープランツ、ヒペリカム
花器:黒の楕円形水盤
ワイヤープランツを水盤の縁から少し垂らし、「山道に沿って伸びる草」のイメージで活けました。枝の野性味と丸い葉の柔らかさが絶妙にマッチし、鑑賞者からも好評だった一作です。


 実例②:ハーブと野の花のさりげない共演

花材:ナツハゼ、タイム、ヤマアジサイ
花器:白い陶器の筒型
タイムの香りがふわっと漂い、目に見えない“香りの演出”まで叶いました。小さな作品ながらも、足元のハーブがナチュラルな余白を生み、作品に奥行きを与えてくれました。


 実例③:秋の静けさを感じるセダム使い

花材:ツルウメモドキ、セダム(オータムジョイ)
花器:ガラス製の平皿
紅葉したセダムを切り花のように短く切って配置したことで、まるで落ち葉が舞い降りたような情景に。秋らしい余韻を漂わせる演出ができました。


庭や暮らしの中での応用|「育てる」ことが暮らしを豊かにする

いけばなに使えるグラウンドカバー植物は、庭や鉢植えでも楽しめる万能選手です。育てて、眺めて、活けて――暮らしの中で何度も登場してくれる存在になります。

 植物のある日常で、こんな楽しみ方も

  • 鉢の中で自然風の寄せ植え
     → 背の高い植物の根元にタイムやリシマキアを添えると、見た目にも美しく、水はけも保てます。

  • 花が終わったあとも残る葉の美しさ
     → 春の花が終わったあとのベロニカやアジュガの葉が、長く緑を保ち、作品の背景づくりにも活躍。

  • グリーンの“切り戻し”がそのまま作品に
     → 伸びすぎたら切る→いけばなに使う→また伸びる…という循環型の楽しみが生まれます。


 シェアできる喜びも

  • 剪定した枝を小鉢に挿して「おすそ分け」

  • 同じ教室の方と交換して「育ててから活ける」を共有

  • 子どもや家族と一緒に植えて育てる楽しみを分かち合う

植物を通じたつながりが広がるのも、グラウンドカバーならではの魅力です。

和の庭と下草文化とのつながり|いけばなに“庭の目線”を取り入れる

グラウンドカバー植物をいけばなに取り入れていると、ふと**日本庭園の「下草(したぐさ)」を思い出すことがあります。
庭における下草は、主木や石組みを引き立てながらも、風景の自然さや季節感を支える
“背景の名脇役”**です。

 和の庭園に見る下草の役割

  • 主木の足元にスギゴケを敷くことで落ち着きと静けさを演出

  • ヤブコウジやヒメツルソバが庭の陰影や移ろいを感じさせる

  • 下草があることで、庭全体が平面的でなく、立体的な風景となる

この考え方は、いけばなにも通じます。
枝ものや花材を際立たせるために、足元に添えるグリーンがあると、作品がぐっと引き締まるのです。


 いけばなに応用するメリット

  • 花材の「根元」を隠すことで作品が自然に見える

  • 下草があることで「時間の流れ」や「場の空気感」を表現できる

  • 草ものだけで構成した**“現代的な野花のいけばな”**にも応用可能

とくに「草丈の低い植物」=グラウンドカバー植物は、日本庭園の下草的役割をいけばなの中で担うことができます。
単なる“飾り”ではなく、「空間をつくる」素材として意識してみてください。


シェア&循環のすすめ|植物とともにめぐる楽しみ

グラウンドカバー植物の多くは、丈夫で増えやすいのが魅力です。
しかも、切った枝をそのまま活けられるという性質上、いけばなをしている人にとっては**“素材の循環”ができる植物**でもあります。

 育てて、活けて、増やして、また使う

  • タイムやリシマキアは切り戻しで新芽が増える

  • セダムやヒメツルソバは挿し芽で簡単に根づく

  • ワイヤープランツも水差しで根が出る→再利用可能

「いけばなで使ったあとの枝を、もう一度土に戻す」
そんな自然なサイクルが、自宅の小さな鉢の中でも楽しめます。


 育てた植物を“おすそわけ”してみよう

  • 増えた枝を小鉢に挿してプレゼント

  • 教室の仲間と「この植物、活けやすいよ」と情報交換

  • いけばな展で「自分で育てた植物です」と伝えると話題にも!

私自身、剪定したワイヤープランツを小瓶に挿して教室に持って行ったところ、「これ、かわいいね」「欲しい!」と反響があり、そこから植物の話が広がったことが何度もあります。


 小さな循環が、いけばなをもっと楽しくする

グラウンドカバー植物は、暮らしといけばなをやさしくつなぐ植物
毎日眺めて育てた植物を、ある日ふと一枝活けてみる。
その一枝が作品を彩り、人との会話を生み、また鉢へと戻っていく――。

そんな**“いけばなと共にある植物の循環”**は、時間の流れと自然の恵みを感じさせてくれます。


体験談|庭のグラウンドカバーを活けてみたら

私が最初にいけばなに使ったのは、自宅の鉢から伸びた「ワイヤープランツ」でした。
いつもの枝ものに少し添えてみたところ、それだけで作品に柔らかさと自然味が加わり、とても新鮮に感じたのを覚えています。

以来、鉢で育てる→活ける→また伸びるというサイクルがとても楽しくなり、少しずつ品種も増やしてきました。
いけばなとグリーンのある暮らしの相性は、本当に良いなと実感しています。


よくある質問Q&A|いけばな初心者にも安心!

Q1. グラウンドカバーって、どれも横に広がりすぎませんか?
→育てる環境によって調整可能です。鉢植えで制限すればOK。剪定で小さく保てます。

Q2. 土がついていて扱いにくくない?
→活ける前に洗って水切りすれば、清潔に使えます。根を落とせば「一枝」として使えます。

Q3. 冬はどうなりますか?
→多年草が多いですが、地上部が枯れても春に芽吹くものが多く、季節の変化を楽しめます。


まとめ|いけばなに「足元の彩り」を

グラウンドカバー植物は、いけばなにおいて作品の足元を整え、自然な広がりや季節感を加える頼もしい存在です。
しかも、自宅で育てて繰り返し使えるという点で、日々のいけばなをより身近に、豊かにしてくれます。

 エッセイ風あとがき|足元に目を向けると、見えてくるもの

いけばなを学びはじめたころ、どうしても「主役の花」ばかりに目がいっていました。枝の形、花の色、器とのバランス……。
けれどある日、先生がそっと添えた一枝の草に、作品全体がふわりと和らいだのを見て、ハッとしました。

そのとき使われていたのが、グラウンドカバーにもなる「アジュガ」でした。
地面を這うような濃い葉が、枝の勢いを受け止め、作品に重心と季節感を与えていたのです。

それ以来、私は草花の「足元」にも心を配るようになりました。
足元に咲くもの、這うもの、広がるもの。
それらは、私たちの暮らしや心のあり方とも、どこか重なっているように思えるのです。

いけばなの足元は、自分自身の足元。
グラウンドカバー植物を育て、活けながら、そんなことを少しずつ感じるようになりました。

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