ギターで作るパスタ!?『キタッラ』ってどんなパスタ?

パスタ

キタッラ(Chitarra)は、イタリア中部・アブルッツォ州を代表する伝統的な手打ちパスタ。まるで“ギター”のような器具で生地を押し出すユニークな製法からその名がつきました。断面が四角く、しっかりとした食感を持つため、濃厚なソースとの相性も抜群です。この記事では、キタッラの魅力を、基本情報から作り方、文化的背景まで詳しくご紹介します。

私が初めてキタッラを知ったのは、イタリアの食文化を紹介するテレビ番組でした。木枠に張られた弦の上でパスタ生地をカットする姿がまるで楽器の演奏のようで、「パスタ作りってここまで奥が深いのか…!」とワクワクしたのを覚えています。現地で食べた手打ちのキタッラは、弾力とソースの一体感が印象的でした。

キタッラとは?

キタッラの定義と名前の由来

キタッラ(Chitarra)は、イタリアの伝統的なパスタの一種で、アブルッツォ州発祥の四角い断面と太めの形状が特徴です。その形状はスパゲッティと似ていますが、角があるためソースがより絡みやすく、豊かな食感を楽しめるのが特徴です。名前の由来は、パスタを作るための専用の道具がギター(イタリア語で”Chitarra”)に似ていることに由来しています。この弦に生地を押しつけると、下に落ちる際に四角い断面が形成されるのです。アブルッツォ州では伝統的に手作りされており、家庭でのパスタ作りの文化が根強く残っています。現在では、乾燥パスタとしても市販され、手軽に楽しめるようになりました。

キタッラの原産地と歴史

キタッラはイタリアのアブルッツォ地方で誕生し、伝統的に手作りされてきました。その起源は非常に古く、19世紀から存在すると言われていますが、一部の歴史学者によると、それ以前から家庭で独自のパスタ作りが行われていた可能性も指摘されています。アブルッツォ地方の豊かな小麦の生産地としての背景が、キタッラの発展に寄与しました。木製の枠に金属の弦を張ったこの道具は、“道具自体が地域の文化”としても愛されています。特に、手作りの文化が色濃く残るこの地域では、親から子へと代々伝えられる伝統的な技術が重視されており、キタッラを作ることは家族の重要な行事の一つともなっています。さらに、アブルッツォの郷土料理の一部として、祭りや特別な日の食事に欠かせない存在となっています。近年では、この伝統的なパスタが世界的にも認知され始め、多くのレストランや家庭で楽しまれるようになりました。

キタッラの特徴と他のパスタとの違い

キタッラは、通常のスパゲッティよりも太く、四角い断面が特徴のパスタです。この形状がソースをしっかりと抱き込み、もちもちとした食感と濃厚な味わいを同時に楽しめるのが魅力です。特にラグーソースやクリーム系のソースとの相性が良いです。また、四角形の形状によって、茹でる際の弾力が増し、歯ごたえのある食感が際立ちます。さらに、キタッラは手打ちで作られることが多く、小麦粉の風味がしっかりと感じられるのも特徴です。一般的に乾燥パスタよりも生パスタの方が食感が良く、手作りならではの温かみのある味わいを楽しむことができます。

キタッラの作り方

必要な道具

キタッラを作るには、専用の「キタッラ」と呼ばれる木枠道具が必要です。この道具は、一見すると小さなハープやギターのような形状をしており、手作業でパスタの生地を弦の上に押し付けることで独特の四角い断面を作り出します。通常、弦は均等に張られており、生地を適切な太さにカットする役割を果たします。張られた金属弦の上に伸ばした生地をのせ、麺棒で押し出すと、弦の間から生地が切れて落ち、あの独特の断面になります。生地を均一にのばすためには麺棒が必須で、熟練の職人は軽く弦を振動させることで美しく切り出す技術も持ちます。この工程は熟練の技が求められる部分であり、職人たちは長年の経験を生かして美しいキタッラを作り上げています。

下図は、実際にキタッラを使ってパスタを成形する工程を簡略化したイラストです。道具の使い方が一目でわかります。

生地の材料とこね方

キタッラの基本の生地は、セモリナ粉と卵を使って作られます。セモリナ粉は硬質小麦を挽いた粉で、グルテンを多く含み、しっかりとしたコシともちもちの食感を生み出します。卵を加えることで風味が豊かになり、生地に適度な粘りと滑らかさが加わります。

材料はシンプルながら、こね方が食感を左右する重要な工程です。粉と卵をよく混ぜ、手で10分以上しっかりこねることでグルテンが形成され、弾力のある生地になります。表面がなめらかで均一になるまで丁寧にこねるのがポイントです。

こね上がった生地はラップで包み、常温で30分ほど休ませることで、より扱いやすく伸ばしやすくなります。その後、生地を均一な厚さにのばし、キタッラの道具でカットすれば、四角断面のパスタが完成します。

成形の手順

生地が休ませ終わったら、以下の手順でキタッラを成形します:

  1. 生地をのばす
     打ち粉をふった台の上で、生地を麺棒で均一にのばします。
     目安は厚さ2〜3mmほど。生地が縮まないよう、数回に分けて伸ばすときれいに仕上がります。

  2. キタッラの弦に生地をのせる
     のばした生地をキタッラ道具の上にのせ、端が弦の両側に均等になるように置きます。

  3. 麺棒で上から押し出す
     生地の上に麺棒をあて、均等な力で押しながら前後に転がします。
     すると、生地が弦でカットされ、四角断面のパスタが下に落ちていきます。

  4. 麺をほぐす
     落ちたパスタを軽く打ち粉してほぐし、束にならないように並べておきます。
     すぐに茹でるか、冷凍保存しましょう。

 キタッラ生地の基本レシピ(2〜3人前)

材料 分量
セモリナ粉 200g
卵(M〜Lサイズ) 2個(約100g)
オリーブオイル 小さじ1(※好みで)
塩(お好みで) ひとつまみ

🔍 ポイント解説

  • セモリナ粉:もちもちとしたコシを出す主役。パン用強力粉で代用も可能ですが、風味と食感が異なります。

  • :標準的には**粉100gに対して卵1個(約50g)**が目安。水分が足りないと感じたら、水を少量(小さじ1〜2)ずつ加えると良いです。

  • オリーブオイル:生地をより滑らかにしたいときに加えます。風味もほんのり豊かに。

  • :風味づけとして加えるかは好みによります。塩分は茹で湯で補うのが一般的です。

キタッラの断面と食感の魅力

四角い断面がソースをしっかり抱き込み、噛むたびにコクのある味わいと、深みのある風味を堪能できます。表面積が多いため、濃厚なソースでも負けず、しっかりと味がのるのがポイント。特に生パスタは、噛んだときの食感とソースの一体感が格別です。

特に手作りのキタッラは、生地の厚みや密度が均一になるように伸ばされるため、噛んだときに独特の歯ごたえが感じられます。さらに、四角形の断面によって、ソースがパスタの表面だけでなく角にも付着しやすくなるため、濃厚なソースとの相性が抜群です。このため、ラグーソースやクリーム系のソースとの組み合わせが特におすすめされることが多く、伝統的なイタリア料理の味わいを存分に堪能できます。

キタッラに合うソース

代表的なソースレシピ

キタッラには、コクのある濃厚なソースが特によく合います。以下に、相性の良い代表的なソースを紹介します。

● ラグーソース(ボロネーゼ)

  • 特徴: ひき肉、トマト、赤ワインなどをじっくり煮込んだソース。

  • 相性ポイント: キタッラの四角い断面がソースをしっかり受け止め、肉の旨味と麺の弾力が調和します。

● アマトリチャーナ

  • 特徴: トマト、グアンチャーレ(豚ほほ肉の塩漬け)、ペコリーノチーズで作るローマの伝統ソース。

  • 相性ポイント: トマトの酸味とベーコンのコクが麺にしっかりと絡み、食べごたえのある一皿に。

● カチョ・エ・ペペ

  • 特徴: ペコリーノ・ロマーノと黒こしょうのみのシンプルなソース。

  • 相性ポイント: キタッラの食感とチーズの塩気が絶妙にマッチ。シンプルながら奥深い味わい。

● クリームソース

  • 特徴: 生クリームやバター、チーズをベースにした濃厚系。

  • 相性ポイント: もちもちした麺によく絡み、濃厚でまろやかな口当たりに。

● シーフードトマトソース

  • 特徴: アサリやエビ、トマトを使った海の香り漂うソース。

  • 相性ポイント: 角のある麺に具材とソースがよく絡み、食感のコントラストが楽しい。

 プチアレンジのヒント

  • トッピングに削ったペコリーノチーズ生バジルを添えると、見た目も風味もアップ。

  • ソースが濃い場合は、ゆで汁を少し加えて乳化させると、なめらかに仕上がります。

ラグーソースとの相性

キタッラはラグーソースとの相性が良く、四角い断面がソースの旨味をしっかりと抱き込み、噛むたびにコクのある味わいを堪能できます。噛むたびに深みのある風味を味わうことができます。さらに、キタッラのもっちりとした食感がラグーの濃厚なトマトベースのソースと絶妙にマッチし、一層満足感のある一皿となります。伝統的なレシピでは、ラグーソースに赤ワインを加えて煮込むことで、より豊かな香りとコクが生まれます。また、チーズを仕上げに削ってのせることで、さらに深みのある味わいを引き出すことができます。

スパゲッティ・アッラ・キタッラ

トマトソースやラグーソースで仕上げたキタッラは、「スパゲッティ・アッラ・キタッラ」と呼ばれます。この料理はシンプルながらも、パスタのもちもちとした食感とソースの濃厚な味わいが絶妙に絡み合い、一口食べるごとにその魅力を存分に堪能できます。生バジルや削ったチーズをトッピングすると、風味がさらに引き立ち、家庭でも手軽に本格的な味わいが楽しめます。

バリエーションと他のパスタとの比較

キタッラのサイズとばらつき

キタッラの太さは、一般的に2mm~3mmほどで、地域やメーカーによって微妙に異なります。アブルッツォ地方では伝統的にやや太めのものが作られることが多く、一方で市販の乾燥パスタではやや細めに作られることが一般的です。また、手打ちの場合、作り手によって微妙に太さが異なり、それもまた味の“個性”として楽しまれています。特に、家庭で作られるキタッラは、手打ちならではのばらつきがあり、それが味わいの個性となることも特徴の一つです。

トンナレッリとの違い

項目 キタッラ トンナレッリ
発祥地 アブルッツォ州 ローマ周辺
太さ やや太め(2〜3mm) 細め
食感 もちもち、しっかり なめらか、やわらかめ
卵の量 一般的 多め
合うソース ラグー、トマト、クリーム チーズ系(カチョ・エ・ペペなど)

市販パスタと手作りの違い

  • 市販品(乾燥):保存性が高く手軽。品質も安定。

  • 手作り(生):風味と食感が優れ、ソースとの一体感が強い。保存は短期向け。

キタッラを楽しむためのポイント

冷凍保存の方法

冷凍する前に打ち粉を軽くまぶしておくと、茹でるときにくっつきにくくなります。

生パスタのキタッラは、打ち立てを小分けにしてラップまたは保存袋に入れ、空気を抜いて冷凍保存。これにより、乾燥や冷凍焼けを防ぐことができます。使うときは解凍せずに熱湯で茹でることで、食感を損なわず美味しく仕上がります。茹で時間はやや長めがおすすめ。また、解凍せずに直接茹でることで、ベタつきを防ぎ、パスタ同士がくっつくのを避けることができます。さらに、ソースと絡める際には、軽くオリーブオイルを絡めるとより一層風味が増します。

相性の良い食材と調理法

  • ラム肉:独特の旨味とコクがマッチ。

  • ポルチーニ茸:香り高く、風味がパスタ全体に広がります。

  • ペコリーノチーズ:塩気とコクをプラス。

  • オリーブオイル+ガーリック:シンプルでも深みが出る組み合わせ。

よくある質問(Q&A)

キタッラについてよく寄せられる疑問を、簡潔にまとめました。初心者の方も、復習したい方もぜひ参考にしてください。

Q. キタッラの調理時間は?
A. 生パスタなら1〜2分、乾燥パスタなら3〜4分が目安。やや早めに茹で上げてソースと合わせるのがおすすめ。

Q. 保存期間は?
A. 乾燥パスタは常温で半年〜1年、生パスタは冷蔵で3日、冷凍で1ヶ月が目安です。

Q. キタッラが手に入らないときは?
A. 太めのスパゲッティやトンナレッリで代用可能です。

Q. キタッラはどんな料理に合うの?

A. 肉料理の付け合わせや、焼きパスタにも応用できます。例えば、オーブンで焼いたラグー×チーズの「キタッラ・グラタン」もおすすめです。

まとめ

キタッラは、その製法のユニークさだけでなく、口に入れたときの力強い歯ごたえと、ソースとの抜群の絡みやすさで、イタリアの家庭やレストランでも根強い人気を誇るパスタです。とくにラグーやトマト系の濃厚なソースと相性がよく、手打ちの良さを最大限に引き出せる一品といえるでしょう。

私にとってキタッラは、“作る楽しさ”と“食べる喜び”を両方感じさせてくれるパスタ。四角い断面がソースをしっかり受け止めてくれるので、味も食感も大満足。もし手打ちパスタに挑戦してみたい方がいれば、まずこのキタッラから始めてみるのもおすすめです!

四角い断面に込められた歴史と家庭の温もり。キタッラは、作る楽しさと食べる喜びが詰まった“物語のあるパスタ”です。

ぜひ一度、家庭でキタッラを手作りしてみてください。道具がなくても、四角くカットできればOK!きっと特別な一皿になるはずです。

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